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桜咲く

小さな小さな虫にも命があるとか云っておきながら
平気で其れを踏み潰していく
其れを目で追う少年はそんなものは嘘だとわかってしまった
強いものが上に立つんだ

狂い咲きの桜は今日も舞う
僕らの頭上追い越していく

ハラ ハラハラ ハラ

  # by white_cat_hina | 2007-04-12 00:06 | 掌編小説

断片―始まりの物語―

決して高くない山に、軽い気持ちで、ハイキング気分で登ってただけだった。
私達はそのとき、遭難した。
遭難した、らしい。
実は記憶が曖昧なのだ。
ずっと夢の中に居るような感覚だったから。

夢の中では、私はパーティに呼ばれていて。
山の中のペンション、沢山のご馳走。
仲良し4人でずっとずっと騒いでた。

こんないいところがあるなんて、また来たいね。
私はそう云った。
でも、そろそろ帰らなきゃ。
そう誰かが言った。

誰だったっけ?
誰だったっけ?

次に気付いたときには病院の中。
仲良し3人で、山から救助されていた。
私達は10日間も行方不明だったと。
飲み物もない、食べ物も無い、そんな状況下で、生存は奇跡的だったらしい。

でも、4人目。
パーティに誘ってくれたあの子。
あの子のことだけがどうしても思い出せないんだ。

  # by white_cat_hina | 2007-04-08 15:12 | 断片

断片―始まりの物語と真由―

遭難した。

山道に沿っていけばなんてことはないハイキングコース。
3時間ぐらいでちゃんとふもとにつけるのだ。

なんで遭難したのだろう。
その疑問に答えはひとつだけだった。

…私の出番なのだ。

私は呟いた。
「ねぇ、私の知り合いのペンションで、パーティをしない?」

みんなきょとんとしている。
遭難しているのに、何をトチ狂ったのかといわんばかりの表情だ。
私は続ける。

「暖かい暖炉があるし、すごくいいところなのよ
 たくさん料理もあるわ
 お腹いっぱい食べても食べきれないわよ
 お姫様みたいな日々が過ごせるの」

どうやっても、この子達を死なせるわけにはいかない。
私は大丈夫、この子達を、私の大好きなこの三人を、どうか。

  # by white_cat_hina | 2007-04-08 15:11 | 断片

断片―清水愛華の場合―

こんな素敵なペンションに泊めてもらえるなんて!!
絶対に一生に一回しかないよ~もう超うれしい!!

「なんでも好きなだけ食べてね!」
その子はにっこり笑って云った。
最初は遠慮してたんだけど、結構食べちゃいました。
それは他の2人も同じだったみたい。
なんだかすっごいお腹空いてたのよね、何でだろう?

いっぱい食べたらお腹いっぱいになっちゃって、寝室に行ったらまたびっくり!
何このお姫様みたいなベット!!
天井から何かかかってる!すごい!!
「このペンションのオーナーの趣味だから気にしないで使ってね」
その子はやっぱりにっこり笑って云った。
何でか名前が思い出せない、誰だったんだろう。

でも、寝心地はちょーっと悪かったかな?
飾りに趣向を凝らしすぎだよ!
もうすこしウォーターベッドみたいなの期待してたのに!

って、そんなに望んじゃ駄目ですね、ごめんなさい。
いや、他が完璧すぎるからアラが目立っちゃうんだよね~。

そんな感じでずっとそのペンションに泊まってたの。
夢みたいだよね!
…って、マジで夢だったみたい。

私達、遭難してたんだって。

ある日起きたら病院で、ホント焦った。
なんか「ぇ?なんでベットがこんな無機質なの?」って寝ぼけて云っちゃって。
めっちゃ心配してた家族から白い目でみられてしまった…。

4人で山登りしてたんだけど、1人どうしても名前が思い出せないんだよね。
行方不明?あの子は!?って3人で騒いだの。

でも、おかしなことに、その子の名前も、顔も、思い出せない。
しかも「あんた達いっつも3人で仲良しだったじゃない」って云われて。
えーっ、ウチに呼んだこともあるでしょお母さん!!

ペンションに誘ってくれたあの女の子。
誰だったのかな。

学校の名簿にも、携帯のアドレスにも、居たはずなのに、居ないんだ。

  # by white_cat_hina | 2007-04-08 15:11 | 断片

断片―仲良し四人という存在―

「そもそも、なんで山に登ろう、って言い出したんだっけ?」
清水愛華はそう言った。
相変わらずあっけらかんとしている。
彼女は昨日の朝退院した。
数日前まで意識をうしなっていた人間とは思えない回復力だ。
明日には学校に行く、と意気揚々と語っていた。
「えっと、…もう一人の子が言い出した、ような」
江崎莉子が言う。
もう一人の子、というのは、三人が名前を思い出せない子だ。
「栞、どした?」
清水愛華が伊藤栞にたずねる。
「ううん、なんでもない。なんか考え込んじゃって」
伊藤栞は答える。
「しょーがないよ、私達には愛華ちゃんみたいな回復力ないって」
江崎莉子は言う。
江崎莉子と伊藤栞はあとしばらく入院が必要だ。
「でもさ、なんでだろうね。なんでみんな覚えていないんだろう」
もう一人の子を、と清水愛華は呟いた。

伊藤栞は考えている。
考え込んで、呟いた。
「次は、私なのかな」
その声は小さく、遭難中に行ったペンションの話で盛り上がる二人には聞こえていなかった。

  # by white_cat_hina | 2007-04-08 15:10 | 断片

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